次の10年を
あなたはどう描きますか?
#全員が自己ベスト

開発に携わったユニフォームで金メダルが夢

草野 拳(スポーツアパレル開発者)
大学で学んだことを生かせる仕事とは?

草野拳(くさのけん)さんはアシックススポーツ工学研究所のアパレル機能研究部というところで、野球日本代表のユニフォーム開発に関わっている。業務としてはアパレルの機能開発がメインだ。
草野さんが現在の仕事に就いたきっかけは、野球で故障した肘を手術したことだった。

「投球のしすぎもあって、高校一年の冬に手術をしました。手術後リハビリをしたのですが、そのとき、理学療法士という仕事の方に『どう治療していこうか』とか『あんまり無理しないほうがいいよ』とか、親身に付き合っていただきました。それをきっかけに理学療法士という職業に魅力を感じ、大学では理学療法の専攻を選択しました。ただ、理学療法というのはすごく魅力的な職業だと思うものの、どうしてもケガをした人の治療となるので、『実際にスポーツでケガをした人の数を減らすことはできない』という風にも感じていて、『どうやったら子供がケガをせずにスポーツを楽しめるかな』と課題感を持ったとき、『ウェアとかシューズを作ることによって、ケガをしない人を増やすことができるのでは』と考えたのが、スポーツメーカーを目指したきっかけです。もともと野球をやっていたことと、『体の動きについて研究していたという大学での知見を生かせるのでは』といってもらえたので、入社してから学んだことと合わせて、ユニフォームの開発にしっかり繋げられているので、自分で研究していても成長したなっていうのはすごく感じます」

そんな草野さんにとっての「全員が自己ベスト」は、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会での金メダルだ。

「いま日本代表野球のユニフォームを開発しているので、東京2020オリンピックで実際に僕らが開発に携わったユニフォームを着て金メダル、というのがいちばんの夢です。優勝したときにみんなで輪になって、というような。競技している側もそうですし、見ている側が同じ目線で同じ空間で同じだけの感動を共有できるっていうのがスポーツのいいところだと思っているので、(東京2020オリンピックは)そういった意味では競技者と同じか、もっとそれ以上の感動を見ているだけで味わうことができる。心が動かされるいい機会なんじゃないかなと思っています」

「全員が自己ベスト」に向かっていくための、草野さんにとっての「自己ベスト」をこう教えてくれた。

「自己ベストって人それぞれあると思いますけど、自分の中で描いているのは今の仕事をしていてその先に誰かが喜んでいる姿がちゃんと想像できているかどうかが、すごく自己ベストに関わってくるのかなと思っています。なので、今やっている仕事がすごく楽しかったり苦しかったりするところもあると思いますけど、その先にそれを着て喜んでくれる人がいるというところを想像して、その人の笑顔を浮かべながら仕事ができていれば、成果によらず自己ベストと呼んでもいいのかなと感じています」

#多様性と調和

自分とは全く別の人のほうが面白い

草野 拳(スポーツアパレル開発者)
自分とは正反対の意見の人とどう向き合う?

アパレル開発の仕事は実は、「多様性」と日々向き合っているのだと草野さんはいう。

「野球日本代表ってスペシャルなユニフォームただそれだけを作っていればいいわけじゃなくて、それとは別に一般の人が買うような商品を作ることも大切な仕事です。どんな体型の人が着るかわからないという難しさもあって、スペシャリストにはそれぞれにカスタマイズしたものをしっかり提供する、ただ一般ユーザー向けにはどんな人が着ても『あっ、これ着やすいな』と思ってもらえるものを作る必要がある、というところですごく、多様性って難しいなあと日々感じています」

仕事を進めていく上でも、人それぞれ様々な意見がある。正反対の意見を持った人と向き合うときの考え方を草野さんが教えてくれた。

「自分の専攻、大学で学んできた知見、それだけではやっていけないのが仕事なので、どうしても『自分はこう考えている』ということに対してまったく別の意見を持っている人が、働いている中ではいます。ただ、その人にも、そう考えているバックグラウンドがあると思っています。例えば「あるものを作りたい」というターゲット(目標)は一緒だけど、考え方がちょっと違っていただけ、というのであれば、もう少し掘り下げて、そこに向けて相手もいろいろ意見があるのだろうな、というところはしっかり共有できる。全部が全部、意見が合うとは思ってないですけど、尊重していければいいのかなと考えています。仕事をしていく中で『興味が湧いた』『こういう学問を勉強してみよう』とか、そういったところを自分の知見とハイブリッドさせることで、オンリーワンのものが生まれるのではないかなという風に考えているので、そういった二つの知識を合わせて自分でものにすることが今、生きているのかなと思います」

東京2020オリンピックには、海外から多くの人が集まる。大会がコンセプトの一つに掲げる「多様性と調和」について、草野さんはどう考えているのだろう?

「いろんな世界の人が日本に入って来てすごくグローバルな社会になっていくと思います。個人的にはやっぱり自分とはまったく別の人、考え方とかもまったく違う人のほうが面白い。なぜかというと、『自分と同じ考えの人とだけ話していても自分が高まっていかない』というのを感じているからです。自分が持っていない知識や考えというものをどれだけ引き出せるかというところで、自分を高めることに繋がってくると思っているので、『自分と考え方が違うからちょっと距離を置こう』とか考えずに、逆に接近してみて『何考えてるのだろう、何か吸収したいな』という思いを強く持つようにしています。人それぞれ違う多様性を持っている中で、全てが同じ方向を向いていなくてもいいとは思っていて、ただ根幹にあるバックグラウンドが全員そろっていれば、ここは調和でいいのかな、と思っています。そして、それぞれが違う方向を向いて、いろんな視点を持っていることが『多様性と調和』なのかなと思っています」

#未来への継承

勉強以外で得られることがのちのち生きてくる

草野 拳(スポーツアパレル開発者)
部活に打ち込んでいるけど、「これでいいのかな」って思うときはどうする?

「継承」という言葉は、何かを次の世代へ受け継ぐことを意味する。草野さんは、後輩に仕事を引き継いだり教えるときに、気をつけていることがあるという。

「教えてもらったことは引き継いでいかなきゃいけない。自分が教えてもらってここがわかりにくかったなってところ多少なりともあるので、そこを踏まえてでもこういうところもあるからちょっと注意したほうがいいよとか、プラスαで引き継いでいければより相乗効果で上がっていけるんじゃないかなっていう風に考えています」

最後に、いま高校生に伝えたいことを聞いてみた。

「自分自身、高校の時は部活が第一で勉強が二の次、三の次、というような生活を送っていたんですけど、やっぱり親だったり教師の方は『勉強は疎かにするな』と。当然本当にその通りだと思うんですけど、ただ勉強以外で得られる例えば集中力というものが、のちのち勉強に活きていたなと思うことがすごくあるので。『これやってていいのかな』って、不安になりながら日々過ごしている方も多いんじゃないかなと思うんですけど、やっぱり何かに打ち込んだ経験って何かに秀でてるとすごくそこがピックアップされて評価されることもすごく多いと思うので、がむしゃらになって取り組んでもらっていいのかなって思ってます。これ今やっていいのかなと思うっていうところを、もちろん人に相談するでもいいですし悩みを打ち明けて、もっと上に頼ってもいいのかな。逆に今の自分世代から見るとこっちから歩み寄ることも重要なのかなと思ってます。若い人が気づけないことに上の人が寄り添う、で逆に上の人を頼るっていうところで、逆にギャップがいい方向に働くことってすごくあると思うので、そういう形でジェネレーション間でしっかり手を繋いで上に上がっていくっていうところが大事なんじゃないかなって思っています」

Profile
Ken Kusano
草野 拳
株式会社アシックス スポーツ工学研究所 アパレル・エクィップメント機能研究部 アパレル機能開発チーム。6歳から野球を始め、小中高12年間(及び大学6年間は野球サークルにて)競技を続ける。大学では理学療法士の国家資格を取得。大学院では臨床バイオメカニクス研究室に所属し、ヒトの動きを計測・分析することによって筋肉や関節に及ぼす力学特性や運動能力・動作との関連を研究した。修士論文は「腱板損傷患者における肩甲骨運動異常と筋活動変化」。アシックス入社後、主要テーマとして侍ジャパン野球ユニフォームの開発を進めている。
#全員が自己ベスト

全員の得意・不得意を合わせて、「自己ベスト」へ

濱田 和優(競技用カーボンフレーム開発者)
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