次の10年を
あなたはどう描きますか?
#全員が自己ベスト

全員の得意・不得意を合わせて、「自己ベスト」へ

濱田 和優(競技用カーボンフレーム開発者)
自己ベストに近づくために、どうしてる?

「ちょうど今、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会を目指す機材を設計・開発していて、その機材が本当に東京2020オリンピックの舞台で輝いてくれたら自己ベストになるだろうなと思います」

濱田和優(はまだかずまさ)さんはブリヂストンサイクルで競技用自転車の設計開発をしている。もともと好きだったという自転車をつくる仕事に就いた濱田さんは、「自己ベスト」をどう考えているのだろう?

「東京2020オリンピックを目指せるような機材を設計・開発する仕事をやっています。もともと教育学部だったので教師になろうかと思っていたのですが、趣味でやっていた自転車で『カーボン』という素材が、流行ってきた時代だったんですね。『ちょっと自分でやってみようかな』と思って、部屋の中で一生懸命、自転車のフレームを一台つくりまして、面接のときにその話をしたらウケて、それでこの会社に入りました」

濱田さんは入社後さまざまな部署で経験を積み、カーボンに関わる仕事に就くことになった。

「『カーボンが好き」とずっといっていたので、そのことを覚えてくださっていた方が『お前カーボン好きだろ?』ということで、当時はまだカーボンについても当社はやっていなかったので、この場所(カーボンラボ)をつくるところからやってきました。この機械(動画内のオートクレーブ装置)はカーボン業界では花形というか、知らない人はいないという機械です。その機械がようやく目の前に来たかと思うとやっと着くとこまで着いたなっていう気持ちはありました」

開発チームの中でも教育学部出身というのは、異色の経歴。ただ、濱田さんは違う世界に身を置いてきたことが役に立っているという。

「無駄になったというのはあまりないかもしれないです。理系出身の人間とはちょっと毛色が違って、違う世界に身を置いていたのもなんだかんだ役には立っているかなと思います」

違う世界にいたからこそ、フラットにメンバーそれぞれに得意・不得意があることを理解できる。それを生かして、チームとして「全員が自己ベスト」に向かっていけるのだという。

「1人でやっているわけではなく複数名でやっています。それぞれに自分の得意なこと・不得意なことがありますけど、お互い得意な部分は認めつつ、それぞれの自己ベストがあると思うので、それを全員が活かせるような形でチームとしてベストを一つの機材に入れていくような形があるのかなと」

ただ、そんな中でも、もちろん苦しいことはある。濱田さんが壁を感じる瞬間と、それを乗り越え自己ベストに近づくための心がけを聞いてみた。

「ものづくりをやっているときはすごく楽しいですけど、それを選手に使ってもらうとなると、ちゃんとしたものだという自信を持たないといけない。そこは結構シビアなところで、しんどいですよね。仕事は辛いものだという人もいますけど、楽しむ気持ちがないと手が動かないです。どんなことであっても楽しい部分を見つけて、自分の中でやりたいと思った中でやらないと、良いものができないかなと思います。よく失敗とかしますけど、『それも面白いよね』と、楽しくやるようにしています」

#多様性と調和

それぞれの「こだわり」を理解してチームで大きなものをつくる

濱田 和優(競技用カーボンフレーム開発者)
「合わないな」と思う人とチームを組んだ時、どうすれば成功できる?

濱田さんにとって自転車は、ただの乗り物ではない。友達が増えてさまざまな人と交流するきっかけをつくってくれたものなのだという。

「大学生になって自転車に乗るようになってから人の繫がりが増えました。自転車に乗ると好きな人たちが集まってくるのでそのときできた仲間は今でも一緒にいます。そういう好きなものを持っている人それぞれに人生観があってその話を聞けて自分の中でも幅が広がったのかなと思います。好きなものがある人っていうのは魅力的です」

そんな大好きな自転車を仕事にするのも、濱田さんにとっては自然なことだった。

「当時、自転車しか頭になかったので、それ以外のことをやるっていうのが、想像できなかったです。よく『趣味を仕事にすると大変だよ』とは聞いていましたけど、(趣味を仕事にしたことで)そんなに辛いことはないかなと。嫌いなことで嫌なことがあるよりは、好きなことで嫌なことがあった方が気持ち的にはいいかなと思います」

ただ、趣味と違って仕事では、「合わないな」と思う人ともチームで取り組む必要があるときもある。そういったときに大事にしているのは、人によって違う「こだわりたいこと」を汲み取ることだという。

「今のカーボンラボについても、設計陣も含めるとそれなりの大所帯になります。自分とは大事にしているものが違う人がいっぱいいるので、『そういうこともあるんだね』と理解した上で、お互い落ち着くところで一緒に進めていくことは結構あります。『これは絶対守りたいんだ』というのが人それぞれ違っていて、それを表に出すわけじゃないので難しいですけど、その辺を汲み取ってあげないといけないのかなというのはあります。こだわりを持っているというのは、結局そこがその人が自信を持っているところです。その部分でその人がちゃんと成果を上げられたら、その人に全部任せた上で上手いことできたら、それはチーム力としてすごく良いことだと思います。でも、ぶつかるときもあります。ぶつかって終わりだと面白くないので、ぶつかったうえでじゃあこの人と話すときはどういったところがゴールになるのだろうということを考えつつやっています」

多様な人とともに同じものに向かって進むことは難しい。それでもチームで仕事をする意味を濱田さんはこう教えてくれた。

「気兼ねなく楽しくやるんだったら、自分1人でやった方が絶対いいですね。ただ大きいものをつくろうとしたら、1人では無理なのでチームでやった方がいいです。(人と)合う合わないはあるかもしれないですけど、絶対にチームでやった方が大きなことはできます。趣味嗜好が偏った人間って変なものをつくりがちですよね。大事な部分が抜けていたり、思い込みでいったりという部分があるので、違う視点を持った人がいないとダメかなと思います。そういった意味でも『多様性』は大事です」

「多様性と調和」をコンセプトにしている東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会で、各国から人が集結することについても同じことがいえるという。

「国単位で見てみると、技術の話と一緒で、一つの国だけだとせまい部分しかわからなかったことがちょっとずつ広がっていくのかなと思います」

#未来への継承

記憶ではなく記録を残す

濱田 和優(競技用カーボンフレーム開発者)
技術の継承ってどんなことなんだろう?

東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会がコンセプトに掲げる「未来への継承」。これは濱田さんの仕事にとってどういう意味があるのか、ずばり聞いてみた。

「東京2020オリンピックを経た上で何ができるのかを常に考えてやっています。そのためにはまず東京2020オリンピックに向けてちゃんと取り組むことが大前提であって、結果によって次にどんどん繫がっていくものだと思うので、その意味では常に継承していることになるかなと思います」

とくに技術の世界では「継承」がとても大事なことなのだそうだ。

「この機械(動画内のオートクレーブ装置)は1960年代ぐらいからずっとあるものです。それが今でも使えているのは、それこそ継承の賜物だと思います。ちゃんとやり遂げてきたことは、記録に残すようにしています。残さないといけないんです。記憶だけで終わってしまうのが一番怖くて、記録にして何かしら証跡を残していかないとダメだと思います。そこはちゃんと意識していないと難しくて、全員が意識をして取り組むことですかね。上からいわれているだけだとあまり浸透しないかなという気はします。なので皆さんが『継承ってどんなことなのだろう』と考えた上で、必要なことだと思ってもらわないと難しいとは思います」

日本の現場でも、もっと未来へ「継承」することが意識されていくべきだと、濱田さんは考えている。

「(技術の世界には)職人技みたいなところがあって、『口では教えられないんだ』『見て覚えろ』ということが結構多くて、それだとやっぱり発展しないです。何かしら(次の世代に伝えるための)形を残してやらないと発展しないと思います。世界に合わせてというか、日本の文化みたいなものだけを突き通すわけにはいかないので、それぞれお互いに認め合いながら、落とし所を見つけていかないといけない。そういうことが経験的にわかって、日本全体がそうなってくれればいいかなと思っています」

最後に、東京2020オリンピックの自転車競技でもし日本のチームがメダルを取れたら、未来はどう変わるか聞いてみた。

「(自転車に)興味のない人の意識が変わるっていうのがものすごく大きいと思うんです。これまで以上にちゃんとした乗り物として認識されれば嬉しいかなと思いますし、自転車のことも考えて街をつくってくれたらより住みやすくなるかなと思います。それ以外…社会的な動きっていうのは何だろうなぁ…。何が起こるんでしょうね、難しいですね。結構考えるんですけど難しいんですよ、これが」

Profile
Kazumasa Hamada
濱田 和優
ブリヂストンサイクル株式会社 設計開発部 レース機材設計課。大学時代は教育系の大学で地学を専攻。同時期、自転車の魅力にとりつかれ、カーボンフレームの自転車を自作した。ブリヂストンサイクル株式会社入社後、販売管理を経て、カーボンラボに配属。現在はオリンピックチームが使用するカーボンフレームの研究開発を進めている。
#全員が自己ベスト

開発に携わったユニフォームで金メダルが夢

草野 拳(スポーツアパレル開発者)
Next Voice
Ken Kusano
RECRUIT | TOKYO 2020 | 東京 2020 オフィシャルパートナー(人材サービス&オンライン学習及び教育サービス)